惟任日向守光秀

日本中世史における明智光秀の実像

濃州余談㉑


描かれている人物は、足利尊氏として、長く流布していましたが、近年の
研究によれば、高師直かその一族ではないかとの説が有力です。

濃州余談⑲と同じく、実戦にのぞみ、戦闘態勢に入った武将が太刀を肩
に担ぎ、兜を着用していないのがわかります。兜は弓矢や後の鉄砲から
頭を守るのに効果がありましたが、首を獲るか獲られるかの接近戦では
重くて無用の長物であり、従者に持たせて、戦闘に臨みました。

この画の人物が足利尊氏ではないという理由のひとつは、尊氏ほどの身
分の武将が、最前線での戦闘に参加する可能性は少なく、そのような姿
を描かせるのは、あまり名誉なことではない、ということにあります。


騎馬武者像(京都国立博物館蔵)

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